筆の進まない小説家が出版社の担当に勧められて向かったのは兵庫県の城崎温泉。昔ながらの温泉地で小説家が出ったのはお化けイモリや頭にマゲを乗せた桂小五郎と名乗る男。そして城崎のシンボルともいえるコウノトリ。
不思議なことばかりが起こる城崎温泉で罪を起こしたとされた小説家が受けた審判とは・・・。
城崎温泉のNPO法人 本と温泉が出版している書下ろし作品で、当然ながら城崎温泉の地名がたくさん出てきます。なので案内マップを片手に読むとより一層臨場感が出ました。万城目さんの作品は何作か読んだのですが、好みの作家とまではいかず。一方でこの作品はわりと入りやすかったように感じましたね。
特に好きな描写は、桂小五郎の写真を見た後に風呂で出会った男が当人だったということを実感した時の男(小説家)のリアクションですね。
"本を閉じて、枕に顔を埋めた。髷を傾け、手拭いで遊ぶ、男の涼やかな眼差しを思い浮かべながら、「ぶ」と天井に向かって屁をこいた。"
屁のくだりは無くても話が通じるのに、敢えて持ってきたあたりが万城目さんはさすがプロの小説家だと感じましたね。