小学校でも友だちのいない「私」は母親の勤めるマッサージ店で母親の仕事中に、部屋の隅に隠れてその様子を見ていた。「お客さんのこわれたところを直している。」という母親だったが、まるで母親の方が壊れていくようだった。
学校でも母親に対する噂が広まり、ますます居場所がなくなった「私」はカーテンの向こうの母を見るばかり。そんな「私」が願うのは・・・。
芥川賞の候補作品ですが、賞の特徴でもある少し闇のある作品でした。それでも暦年の受賞作品や候補作品と比べると読みやすかったですね。
小学生の「私」の視点で書かれているので、話の中心にくる母の行為についてははっきり表現せず、一方で子どもの視点で見た想像力がしっかりと表現されているなど、バランス感覚のある内容になっていたように思います。
何度か出てきた大人のクツを擬人化した表現がまさにそれで、母の行為の気味悪さとリンクしていた印象的なシーンでしたね。
最後のシーンが想像していたものと違っており、読み終えた直後はスッキリしなかったのですが、少し時間をおいて改めてもう一度読んでみると納得できる終わり方でした。
「私」が大人になり、今の母と同じ年齢になったときにどう感じたかなどのアフターストーリーも読んでみたいですね。