どちらかと言えば、つぶあん派です。

はじめまして、よっさんと申します。1982年、広島県生まれ。「あひるの空」とゆずの「夏色」とチキン南蛮を愛する一児の父。瀬戸内を盛り上げるために日々奮闘するも、泳げないのがタマニキズです。

『サウスバウンド/奥田英郎』

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中野ブロードウェイが通学路となっている上原二郎は普通の小学六年生だった。クリーニング屋の息子・淳や医者の息子・リンゾウ、判子屋の息子・向井らとともに普通の小学高生活を送っている、ただひとつ違うのは父・一郎が元過激派ということだ。
国に従うことを嫌う父に翻弄され、西表島に家族みんなで移住することになり、そこでも一郎が再びかき乱すものの、反対に家族の絆は強まっていく。
青い空、青い海の西表島で二郎が見た家族の姿とは・・・。

何というか、身近にいたら絶対嫌なタイプなのですがそれでもどこか憎めない、父・上原一郎はそんな人ですね。500ページ越えの長編ではありますが場面展開も結構あるので飽きることなく読むことができました。
何かと問題を起こす父ですが、所々にある彼のセリフが信念を表していて印象的でした。

「二郎。世の中にはな、最後まで抵抗することで徐々に変わっていくことがあるんだ。奴隷制度や公民権運動がそうだ。平等は心やさしい権力者が与えたものではない。人民が戦って勝ち得たものだ。誰かが戦わない限り、社会は変わらない。おとうさんはその一人だ。わかるな。」

また、姉と話しながら二郎が感じた"家族のいる心強さに、二郎は胸が熱くなった。もう一杯御飯を食べたくなった。ひもじい思いさえしなくていいのなら、家族がいる限り、どこだって住めば都だ。"という描写がとても良かったです。

混乱期こそ、家族の強さが試されると思います。新型コロナウイルスに自然災害に、何かと暗い話題の多い中で、読了後は少し笑顔になれる、そんな作品でした。