どちらかと言えば、つぶあん派です。

はじめまして、よっさんと申します。1982年、広島県生まれ。「あひるの空」とゆずの「夏色」とチキン南蛮を愛する一児の父。瀬戸内を盛り上げるために日々奮闘するも、泳げないのがタマニキズです。

【赤ペン先生の教え】

梅雨時期の中休みなのかな。今日は青い空から太陽が顔を出していたよ。
土曜日の午前中はいつもみんなでサッカーをするんだけど、ここ何日かは毎週末に雨に当たっていたからなぁ。ほとんどサッカーができなかったら、今日は久しぶりにサッカーができて楽しかったなぁ。

家に帰ると「陽介ー、赤ペン先生から手紙が来ているよー。」と母ちゃんが叫んだ。赤ペン先生というのは通信制の勉強講座の添削システムの事で、毎週課題の答えや相談事を書いて赤ペン先生に答案を送ると、添削にメッセージを添えて返信してくれるんだ。
僕の年齢になると塾に通い始める同級生も増えてくるんだけど、僕には自分のペースで勉強ができる赤ペン先生の方が性に合っているんだ。
実際に赤ペン先生を始めて半年が経つんだけど、苦手だったものも段々と上達しているのがわかるんだよね。

リビングの机の上に置いてある封筒を手に取って開けたよ。
差出人は赤ペン先生である武上吉之進先生。手紙にはこう書かれていたんだ。


『陽介殿、確かに便りを頂戴した。大根が上手く斬れないとのこと。確かにいきなり大根を斬るのはいと難しじゃ。まずは大根よりも軟らかいワラから始めてはいかがなか。あとは、刀をしっかりと磨き上げることじゃな。刀とて命を宿しておる。磨けば磨くほどお主の気持ちも通じて斬れるようになるであろう。しっかりと精進せよ。期待しておるゆえ。武上吉之進』
 
なるほどー、確かに大根を斬ることばかり考えていたけど高いハードルが跳べなかったら、目標を少し下げてまずは達成することから始めないといけないもんね。小さな成功を積み重ねていくうちに、きっと大きな目標も達成できずはず。
昭和の大横綱千代の富士関も1,000勝を達成した時に応えていたもんね。

記者「1000勝、おめでとうございます。次の目標は?」
千代の富士「1001勝です。」

あの千代の富士関だって一歩一歩が大切って言っているんだから、僕も頑張ろうっと。
それにイチロー選手だって、グローブをメチャメチャ大事にしていたって聞いたことがあったっけ。僕も心を込めて磨かないといけないな。

陽介は武上吉之進の言葉を深く胸に刻んだ。



二週間後の土曜日、梅雨明け宣言をした初夏の空はどこまでも青く透き通っていたよ。いつものようにサッカーをして家に帰ると、母ちゃんが僕に言ったよ。

「陽介ー、赤ペン先生から手紙が届いているよー。」
「わかったー。」

リビングに入ると机の上に封筒が置いてあったから、急いで封筒を開けたんだ。


『陽介殿、確かに便りを頂戴した。日進月歩で成長しているようで、わしとしても大層嬉しく思うぞ。さてこれからは、道具選びじゃな。お主が今使っておる"雲雀笛"は良業物の良い代物じゃ。ただし、これからは自分の成長に合わせて道具も選んでいかねばならぬ。人の成長が環境を作り、環境が人の成長を作るのじゃ。まずは大業物を使うことから始めてはどうかな。"松葉牡丹"や"籠枕"なんぞは使いやすくてよい。最初は使いにくいかもしれんが、少し高めの目標を持つと日々の鍛錬に意欲も出るであろう。しっかりと精進せよ。期待しておるゆえ。武上吉之進』


そっか、少し高めの目標かぁ。確かにコンスタントに目標をクリアできるようになってきたから、もうちょっと上を目指して頑張ってみようかな。ノーベル文学賞を受賞したフランスの小説家・アーベル=カミュも言っていたもんね。

「人間が唯一偉大であるのは、自分を越えるものと闘うからである。」って。

それにビル・ゲイツも「私たちはいつも、今後2年で起こる変化を過大評価し、今後10年で起こる変化を過小評価してしまう。無為に過ごしてはいけないんだ。」って言っているし、上を向いて努力することは大切だよなぁ。
頑張ろうっと。

陽介は武上吉之進の言葉を深く胸に刻んだ。



さらに一か月後の土曜日、夏真っ盛りを思わせるような暑い日になって、空はどこまでも青く透き通っていたんだ。いつものようにサッカーをして家に帰ると、またいつものとおり母ちゃんが叫んだよ。

「陽介ー、赤ペン先生から手紙が届いているよー。」
「わかったー。」

リビングに入ると机の上に封筒が置いてあったから、急いで封筒を開けたよ。


『陽介殿、確かに便りを頂戴した。段々と大業物を使いこなすようになってきたようじゃな。わしも嬉しいぞ。大業物の次となるといよいよ最上大業物になる。しかしその前に鍛えなければならぬものがある。それは「心」じゃ。「心技体」と言ってな、普段からサッカーをやっておるお主には健全な肉体が備わっておるであろう。そして、大業物を次第に使いこなせるようになってきておるなら、技についても申し分ない。あとは「心」じゃな。こればっかりはわしがあれこれ言えることでもない。でもお主なら大丈夫じゃ。しっかりと精進せよ。期待しておるゆえ。武上吉之進』


「心」かぁ。
オリンピックで柔道三連覇を成し遂げた野村忠弘さんも「心技体、なぜ心がはじめにくるのかわかりました。」って言っているし、やっぱり一番大切なんだなぁ。
何より宮本武蔵先生が「心、常に、道を離れず。」と言っているように、強い信念を持って剣の道に進むことが大事だよね。
僕もできるはずだ、よし頑張ろう!!!


陽介は今日も机に向かい、吉之進からの課題に向かった。



真剣ゼミ。
これで剣術を学んだ陽介がのちに鷹の目ミホークとして、世界一の剣豪に君臨するのはもう少し先の話。