時は幕末。会津藩士・山浦鉄四郎は戦を好まず平穏な人生を望みながらも、ちょっとしたことから新撰組の隊士となる。そして、薙刀を使いこなす中野竹子と出会い、時に反発しながらも惹かれていく。それは竹子も同じ。
そんな中、世の中が変わるほどの内乱が始まる。鉄四郎は仲間も友を失い、そして竹子も・・・。
個人的に外れがないと思っている天野さんの作品の中でも、かなり好きな作品です。
描写は、その風景がしっかり浮かんでくるよう丁寧に書かれています。
竹とんぼをいじりながら竹子と話をする沖田総士や、戦に向かう決意をして髪を切る竹子、誠一郎の髻(もとどり)を落として懐に入れる鉄四郎。そのどの描写も実際の風景が連想できますね。
そして、一級品のセリフまわし。
時代小説というとどうしても言い回しが難しくなってしまうのですが、天野さんはわかりやすい言い回しを使いながらも、時代小説の世界観を壊さない所が凄いです。
例えば、鉄四郎の心情を絶妙に表現している「死にたがるやつが多すぎる。」というセリフ。シンプルながらも印象に残るセリフでした。
そんな中で一番好きなセリフは、鉄四郎が土方歳三に言ったこのセリフですね。
「土方さん。この戦が終わったら、またどこかの店で一杯やりましょう。今度は、政も戦の話も抜きだ。」
作品を読めば読むほど、天野純希という作家が好きになります。