どちらかと言えば、つぶあん派です。

はじめまして、よっさんと申します。1982年、広島県生まれ。「あひるの空」とゆずの「夏色」とチキン南蛮を愛する一児の父。瀬戸内を盛り上げるために日々奮闘するも、泳げないのがタマニキズです。

『蕎麦、食べていけ!/江上剛』

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寂れた地元の温泉街を立て直すべく立ち上がったのは地元の信用金庫に努める赤城勇太。勇太が考えた打開策は新たな村祭りと高校生が打つ蕎麦打ちイベントだった。一方で、勇太の前に立ちはだかったのは実の兄であり東京のメガバンクに勤める勇之介。彼が打ち出したのは大型ホテルを中心とした温泉街のリゾートセンター化。
故郷への愛情を感じさせない勇之介の計画に勇太は憤り、大手メガバンクに啖呵をきる。地元の人たちや蕎麦打ち名人竹澤誠司を巻き込みながら奮闘する勇太の頑張りに、見えてきた温泉街の目指すべき姿とは・・・。

実の兄弟が対立するシチュエーションは珍しいのですが、中小企業が大手に挑む構図はよくあるので、ある程度最後がどうなるかは予想できましたね。その中でどういう展開に持って行くかを気にしながら読みました。
町おこしや地方創生をテーマにした作品は身近なものとしてイメージしやすいのですが、そこに銀行の要素を絡めていたので違った視点で見ることができましたね。
地元の信用金庫と東京のメガバンクの構図は脚色があるもののスッとイメージができました。

少し人間関係を絡ませ過ぎたようにも感じましたが、それぞれが埋もれることなく個性が立っていたので、「あれ?これ誰だっけ?」ということはありません。

そして祭りの準備で寿司を差し入れられた時に「祭りは、当日の盛り上がりや一体感も素敵だが、準備段階で多くの人との絆が生まれることが一番素敵だと思う」と思い返すシーンが良かったです。

また、思いつめている一方で事情を話したがらない勇太の心境を悟った支店長霧島の「分かった。しかし困ったことがあれば相談しろよ。」というシーンもグッとくるものがありましたね。

そして最後の描写。
ネタバレになるので書きませんが、いいセリフで終わっていました。
主人公の熱量が伝わり、明日から頑張ろうと思えるスカッとした作品です。