どちらかと言えば、つぶあん派です。

はじめまして、よっさんと申します。1982年、広島県生まれ。「あひるの空」とゆずの「夏色」とチキン南蛮を愛する一児の父。瀬戸内を盛り上げるために日々奮闘するも、泳げないのがタマニキズです。

『彼岸花が咲く島/李琴峰』

f:id:yossan-tsubuan:20220928230424j:image

記憶を失った少女が流れ着いたのはノロが治める島だった。女性しかなることができず、男性は女性と違う言葉を話す。歴史を伝えるのも女性のみという島のおきての中で、流れ着いた宇実と宇実を見つけた游娜の二人の少女。そしてノロになりたい少年の拓慈。三人の思いが交錯する島には彼岸花が赤々と揺れていた。

テーマは重いのですが人物・風景ともに丁寧に書かれていたので沈んだ気持ちにはなりませんでした。独特の言い回しもあるのですがそういう文化だと思って読むようにしましたね。
例えばタイトルにも使われている彼岸花の描写。

"緑の茎に支えられている無数の妖艶な炎の触手、それが傾きつつある橙色の西日を照り返し、今にも燃え尽きてしまいそうで儚く見えた"

彼岸花でも別名の曼殊沙華でもいいのですが見た目の割に名前が強いのですが、そのギャップを上手く表現されています。

またラストで2人が拓慈に歴史を伝えることを決心した際の「私たちも、正しいと思うことをすればいいんじゃないかな」というセリフがシンプルなのに的を得ていました。

美しい島風景と重たい歴史の相反するものを三人の子どもがしっかりと結び付けているような印象でしたね。映像で見たい気もしますがこの作品は小説にとどめていた方がよさそうです。