どちらかと言えば、つぶあん派です。

はじめまして、よっさんと申します。1982年、広島県生まれ。「あひるの空」とゆずの「夏色」とチキン南蛮を愛する一児の父。瀬戸内を盛り上げるために日々奮闘するも、泳げないのがタマニキズです。

『火山のふもとで/松家仁之』

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主人公のぼく(坂西)が入所した村井設計事務所では夏の間だけ、軽井沢に事務所を移転するのが恒例だった。戦前のアメリカで名匠ライトに師事した所長の村井は時代に左右されない自分なりの答えを持った建築家であり、そんな村井設計事務所に「国立現代図書館」の設計コンペの話が来た。
コンペに向けて事務所の所員の仕事が加速する中、ぼくは先生の姪である麻里子と恋をすることになる。そして先生の身にも・・・。

緩急は少なく淡々と話が進むのですが、風景描写も人間模様も綺麗な作品だったと思います。村井設計事務所ではクライアントを専門用語で煙に巻くようなことはけっしてしないとあるように、登場人物の優しさがにじみ出ていたのかもしれません。
また、内田さんが言った「台所仕事や洗濯、掃除をやらないような建築家に、少なくとも家の設計は頼めない」というセリフが面白かったですね。

さらに「図書館のような公共建築を、利用者が頼んでくることはない。」というセリフが的を得ていてそのとおりだなと感じました。所々に出てくる建築に対する考え方が新鮮で良かったですね。

一方でぼくと麻里子がキスをしたシーンの描写は綺麗で情景が浮かんできました。

風景とそこに出てくる人物のバランスがよく、本の舞台である軽井沢でゆっくり読んでみたいと思いましたね。