いじめを苦に自殺したクラスメートの遺書に書かれていた四人の名前。いじめていた2人、好意を寄せていた女の子。そして主人公・ユウが書かれていたのは「親友」。しかし、実際はクラスのいじめをただ黙って見ていただけだった。残されたクラスメートと家族の苦悩が複雑に交錯する。
重松さんの作品らしく人間模様を丁寧に書かれているのですが、今まで読んだ作品とはテイストが明らかに違いました。人間の暗い部分を書いた作品は初めてですね。
「僕たちの世界には、真ん中に深い穴が空いている。その穴を埋めることに疲れてしまったのなら、世界を外に広げていくしかなかったのだ。」という表現が秀逸で、関わった人たちの苦悩がよく伝わってきました。
自殺したフジシュンが行きたがっていた森の墓地に、フジシュンとフジシュンの弟と行くことで区切りがつくが、これを拒み十字架を背負って行き続けることを選んだユウの描写など、最後までスッキリすることは無かったのですが「死」について改めて考えることができました。
さすがの重松クオリティですね。