食品会社の経理課に勤める普通の独身サラリーマン新堂修一は大みそかの夜に、いつものように買った宝くじの番号をいつものように確認したところ、それは当選番号の宝くじだった。当選金額は2億円。
年が明けて銀行で手続きを終わらせ、通帳に印字されたのは「200,000,000送金」の文字だった。それ以降、修一の人生は一気に変わり始めた。増え始める親戚に友人。寄付金の勧誘とネット掲示板での炎上。同級生に元カノとの再会・・・。そして、かつて100万円を貸したまま行方不明になった親友の小野寺俊平も修一の前に現れた・・・
今まで宝くじで当選しないかなと思ったことは一度や二度ではないのですが、これを読むと高額当選はしなくてもいいかも・・・と思ってしまいます。現実はここまでではないにしても、間違いなく人生のリズムは狂うのでしょうね。
「ぼくは、"二億円当たった新堂修一"。いつでもどこでも二億円が付いて回る。」とあるように、ある種の剥がれないレッテルを張ったまま人生を歩むにはしんどすぎます(苦笑)
また、同期の志織が「金の切れ目は縁の切れ目っていう怪物と戦っている」と言ったように、やはりお金関係は綺麗にしておかないといけないと思います。それが身内との間であっても。
そして実家の塀に書かれた落書きを消す修一を現した表現がいいなと思いました。
「ネット上の落書きは自らの手で消せないが、塀の落書きなら消すことができる。」
裏切りや妬みの描写が凄すぎてラストがかすんでしまうのですが、安藤さんらしく登場人物の心理描写が上手くて感情移入しやすい作品でしたね。