『優しい死神の飼い方/知念実希人』
死んだ人の魂が地縛霊となることなく解放するよう導く役目をする死神。犬の姿になり地上のホスピスに派遣された死神は人間の女性・菜穂と出会い、レオと名付けられる。
ホスピスでは患者の様々な過去の縺れを解きほぐしていくが、結果的にその行動がホスピスに思いもよらない危機を招いていた。そしてレオの飼い主である菜穂にも・・・。
タイトルだけ読んでどんな話かなと思ったのですが読んで納得できました。
前半で登場人物ごとのエピソードを書き、後半でそれを繋げながら話が展開されおり、人物描写、風景描写、構成と、どれもが見事でしたね。特に後半の盛り上がりからのエピソードでの着地が良かったです。
「死」を題材にした作品ですが、重くなりすぎず、でも伝えるべきことはしっかり伝えているあたりは、作者がお医者さんだからこそ書けるのかもしれません。
春を迎える時期に読めて良かったです。
画家の内海に焦点を当てた章「死神、芸術を語る」でレオの言った言葉が素敵でした。
「あの子供はどんなに望んでも、太陽を見ることができなかった。そんな子供が夜中に散歩していると絵を描いている男をみつけた。その絵には少年が渇望しているものが生き生きとえがかれていた。」
「その親子が買っていった絵すべてに描かれていたんだ。お前の創り出す『色』が最も美しく映えるものが。」
そこには絹のように純白な太陽が輝いていた。