『明るい夜に出かけて/佐藤多佳子』
コンビニの深夜バイトで働く富山は大学を休学しながら自分の存在というものに悩んでいた。自分が自分でいられる唯一の場所は深夜ラジオ。ハガキ職人として投稿をしながら、存在意義を必死に示していた。
ある日、おかしな格好でバイト先のコンビニに来た女はハガキ職人の間では名の知れた存在である「虹色ギャランドゥ」。それからというもの、富山と虹色ギャランドゥ、同じバイト先の鹿沢、自分もラジオのヘビーリスナーである永川の四人のおかしな関係が始まった。
自分もナイティナインのオールナイトニッポンや安部礼司を結構聞いていたので、共感できるとことも結構ありましたね。作中に出てくるアルコ&ピースのオールナイトニッポンも聞きたくなりました。
小説は非日常的な物語が多いのですが、この作品は絶妙なタッチで日常のような非日常を描いてありました。ここまで自分の存在に悩んだことはありませんが、誰にでも訪れる可能性があるように思います。
独り暮らしを辞めて実家に帰ることになり、バイトを辞めないといけなくなったことを副店長に伝えた時の副店長の言葉が良かったですね。
「やり直しがきかないこともあるが、君の年だと色々なチャレンジができる。何度でもできる。」
「金が必要になったら、また、ここで働けばいい。」
誰しもが自分の存在意義を認めてもらいたくてもがくのだと思いますが、それをわかってくれる人いるというのは幸せなことですね。