心臓移植によって生かされることになった患者の生きることに対する苦悩を描いた「他生門」。体の一部に強烈な美を見出す作家を描いた「耳」。入院患者と看護師のやりとりを描いた「クモの意図」。
かつての芥川龍之介の名作が風刺を携えて蘇る短編七作。読んだ後には妙な禁断症状が残る・・・かもしれない。
芥川龍之介の作品をアレンジしており、どれも斜め上から書かれていました。
・病院の中 ← 藪の中
・他生門 ← 羅生門
・耳 ← 鼻
・クモの意図 ← クモの糸
・極楽変 ← 地獄変
・バナナ粥 ← 芋粥
・或利口の一生 ← 或阿呆の一生
ここまで来ると見事だったので、事前に原作を読まなかったのは完全に失敗でした。その分フレッシュな気持ちで読めたのですが、それでも原作を読んでおくべきだったですね。
個人的に好きなのは「バナナ粥」と「クモの意図」ですね。この2作はオチまで綺麗にまとまっていたと思います。