どちらかと言えば、つぶあん派です。

はじめまして、よっさんと申します。1982年、広島県生まれ。「あひるの空」とゆずの「夏色」とチキン南蛮を愛する一児の父。瀬戸内を盛り上げるために日々奮闘するも、泳げないのがタマニキズです。

『僕らは風に吹かれて/河邉徹』

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古着屋でバイトをしながら自分のファッションをインスタグラムに上げている湊。5万人のフォロワーがいる彼は、ある日人気上昇中のバンド「ノベルコード」のボーカルである蓮に誘われ、バンドのメンバーとなった。あれよあれよという間にノベルコードの進む列車は加速し始め、自分たちでも感情が追い付かないくらい世界が変わり始めた。
そんな中、列車の動きを止め始めたのは世界的に広まったパンデミックだった。
一度スピードを失った列車は中々前に進まない。アップダウンの激しい世界情勢の中で湊たちが見て、感じて、考えたこととは・・・。


序盤がとんとん拍子に物事が進んでいたのでこのままでは終わらないと思っていましたが、新型コロナウイルスの事を絡めてくるとは思いませんでしたね。著者の河邉さん自体がバンドでドラムをやっているので、音楽業界にとって書かれていることがリアルの世界なのだと思います。

「この時代を生きていくためには、色々できないとだめなんだよね。」

湊の言葉が好きですね。色々なことに手を出して、色々な人とつながっていないと自分の存在を見失いそうな現代を上手く表現していました。

また、頑張っている人の列車に乗せてもらって自分は何もせずに景色を眺めているだけと言う感覚は、少なからず誰しもが経験したことがあって、自分の手で列車を動かしたことがある人の方が少ないのではないかと思います。
今の新型コロナ禍においても自分で何かを切り開いたという感覚は無いので、改めてそう思いました。

そういった意味で、カウントダウンジャパンで演奏する前にレコード会社の首藤社長がメンバーにかけた「クソ新人のお前らを観に来てくれた変わった客に、感謝してライブしろよ」というエールがカッコよかったですし、自分を認めてくれる人がいる(=自分が誰かを認める)ということが救いになるというのに十分なメッセージですね。

タッチは軽いのですが爽やかさだけではなくて、考えさせられることもある作品でした。