東京で働く咲子に故郷の徳島で暮らす母・龍子が末期癌で数ヶ月の命と告知された。ショックながらも徳島に戻って母を看取ろうと決めた咲子だったが、そんな咲子をしり目に龍子は黙って「献体」を申し込んでいた。神田のお龍と呼ばれ、その豪快さと人情味でたくさんのひとから愛された龍子が検体を選んだ理由とは? そして咲子が会ったことのない父とは・・。夏の徳島を舞台に、母の想いが明らかになる・・・。
歌手さだまさしの楽曲は関白宣言や精霊流し、案山子などしかしりませんが、この小説はまさに案山子のような綺麗な家族愛を描いていたように感じます。
「綺麗」というのがシンプルに感想として上がってきましたね。
また、僕の母校・信州大学の描写や天狗になっていた売れっ子歌手に対して塩をまいた龍子を「水戸泉」と表現した部分は思わず、口元が緩んでしまいました。
一方で、ラストの阿波踊りでのシーンが最高に良かったです。
かなりのネタバレになるので詳細は書けないのですが、神田のお龍の生き方に頭が下がります。生きるとはどういうことか、一本通った芯のようなものを感じましたね。
何回か徳島には行ったことがあるのですが、改めてこの視点で眉山や阿波踊りを見たいと感じました。