どちらかと言えば、つぶあん派です。

はじめまして、よっさんと申します。1982年、広島県生まれ。「あひるの空」とゆずの「夏色」とチキン南蛮を愛する一児の父。瀬戸内を盛り上げるために日々奮闘するも、泳げないのがタマニキズです。

『こぼれる/酒井若菜』

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22歳の雫がアルバイト先の本屋で出会ったのは趣味でカメラを始めた大介だった。ひとまわり違う大人の大介に魅かれていく雫だったが、彼には妻子がいた。悩みながらも不倫の関係を続けていた雫だったが、意を決して大介と別れることを決意する。しかし、別れ話をするために大介と会うことを約束した日の当日、事件が起こる・・・。雫と大介の不倫を、雫、大介、雫に一方的に恋する大学生の島田、大介の妻・千尋のそれぞれの視点で描かれた物語がつながる。

女優の酒井若菜さんはグラビアアイドルをされていた頃から割と好きなのですが、それでも少し構えてこの作品を読みました。しかし、読んだ後には見事に予想を裏切られましたね。面白かったです。連作短編だから当たり前と言えば当たり前なのですが、それぞれが絶妙にシンクロしていました。

雫のために夜中に出かける大介に対して千尋が言った「待ってるね」や、島田が茜に言った「最初から顔を上げて生きている人間には分からないんだよ。ただ顔を上げる。それがどんなに勇気がいることなのか分りようがないんだ。」という言葉の数々が、心境を上手く表現していて良かったです。

ケツァールはちょっと展開が強すぎましたが、ルービックキューブのくだりは上手く例えていて、しかもそれを序章に持ってくるあたり、センスいいなぁと思いました。

小説の内容は重たいのに、それを凌駕するような技術がありましたね。