高知県庁に生まれた新しい部署・おもてなし課で、若手職員の掛水が人気作家・吉門喬介に観光特使を依頼する所から始まる。いわゆるお役所仕事をどんどん一刀両断する吉門に対して、どうすれば民間感覚を持って地元を盛り上げることができるか葛藤する掛水。
アルバイトの明神、観光コンサルタントの清遠ら、個性豊かな面々とともに時にはぶつかりながら、時には涙を流しながら本気で故郷と向き合う物語。
久しぶりに、なおかつ観光目線で読みましたがそれでも面白く読むことができました。何回読んでも楽しめるということは、やはり小説としての完成度が高いのでしょうね。
行政は民間の裏方に回り、外貨を受け取った民間から税収で投資を回収するとありますが、行政が裏方という発想はあっても投資を回収という発想は当時では珍しかったんじゃないかと思いますね。
また、「意識をすっと切り替えることは難しい。でも、やれることからやっていかないといけない。」という下元課長の言葉も素敵でした。これは行政に限らず、何にでも通用しますし。
「観光にしても商業にしても、成功している都市は変化を恐れていない。」
「自治体というものは効率よりも公に言い訳が立つことを優先しないといけない組織」
この辺りも言葉に重みがありました。
最後に、男になった掛水も素敵でしたが、個人的には吉門さんのプロポーズと、おもてなし課に送った「見せてもらいますよ。あなたがたがここから先どうするか。」というエールが最高にかっこよかったです。
有川さんが故郷・高知のために全力で書いた応援メッセージ、もし自分が高知県民だったらこの小説を家宝にしますね。