かつて天才・羽生善治と互角に渡り合った棋士がいた。その名は怪童・村山聖。
29年という短いながらも太い時間を過ごした村山聖の命をかけた将棋人生が、師匠の森や目標とした谷川、そしてライバル羽生との出会い、さらには伸一・トミコら両親の深い愛情と一緒に綴られています。
藤井聡太くんの快進撃で将棋界にスポットライトが当たっていますが、将棋にそこまで詳しくない自分でもグッと来るものがありましたね。
"村山にとって 20歳まで生きるということは大きな目標だったのである。"
"僕には夢が二つある。一つは名人になって将棋をやめてのんびり暮らすこと。もう一つは素敵な恋をして結婚することです。"
この二つの描写が、いかに村山さんが生きるということに執着していたかがひしひしとつたわってきます。
また、大阪の将棋会館の近くでばったり出会った羽生さんを食事に誘うシーンがあるのですが、うまそうに、そして楽しそうに食事をする二人のシーンがいいですね。
ライバルでありながら友情も兼ね備えていたであろう二人だからこそ、今の時代まで村山さんが生きていたらどうなっていたかなと思います。
Amazonレビューが4.8(ハードカバー・文庫本合わせて200以上の評価あり)という、過去に自分が見た中でもっとも評価の高い本ですが、これは間違いなく読んでおいた方がいいです。
作品の言葉を借りるなら、"純粋で強情でユーモラスで、わがままで優しくてそして弱かった"、そんな村山聖という男の青春がしっかりと書かれていました。